毛髪(頭髪と体毛)は毛包から生えてきます。毛包は、表皮と皮下脂肪層(皮下組織とも呼ばれます)の間にある真皮層の中にあります。毛包はほぼすべての部位の皮膚にみられますが、唇、手のひら、足の裏には存在しません。新しい毛髪は、毛包の底部にある毛母(毛母基)という場所で作られます。毛母の中の生きた細胞が増殖して、上に押し上げられていきます。それらの細胞はすぐに乾燥して死に、凝縮して密度の高い硬いかたまりとなり、これが毛幹を形成します。毛幹は死んだ細胞のタンパク質で構成されており、薄い板のようなうろこ状の壊れやすい角質(キューティクル)で覆われています。
皮膚組織をみる
皮膚には3つの層があります。皮膚の下には神経、神経終末、腺、毛包、血管があります。汗は真皮の中にある腺で作られ、導管を通って皮膚の表面に排出されます。 |
毛髪の色は、皮膚の色と同じく メラニン 皮膚の色素の概要 メラニンは、人の皮膚、毛髪、眼に様々な色合いをもたらしている色素です。どのような色になるか(色素の沈着)は、その人の皮膚に含まれるメラニンの量によって決まります。メラニンがなければ、皮膚は青白くなり、同時に皮膚から透けて見える血流のためにピンク色がかって見えます。皮膚の色が薄い人ではメラニンの生産量が非常に少なく、皮膚の色がやや濃い人では... さらに読む 色素によるものです。人間の毛髪の色は2種類のメラニンから生じます。1つは黒い毛や茶色い毛にあるユーメラニンで、もう1つは赤褐色の毛や赤毛にあるフェオメラニンです。ユーメラニンが薄まると金髪の色が生じます。
毛髪の成長には周期があります。各周期は、長期間の成長期と、次の短い移行期、その後に続く短い休止期から構成されます。休止期の終わりになると、その毛髪は抜け落ち、新しい毛髪が毛包の中で成長を始め、新たな周期が始まります。まゆ毛とまつ毛の成長期は1~6カ月間です。頭髪の成長期は2~6年間です。正常であれば、毎日50~100本程度の頭髪が休止期の終わりを迎え、頭皮から抜け落ちていきます。
毛髪の成長は男性ホルモン(テストステロンやジヒドロテストステロンなどのアンドロゲン)によって調節されていて、これらの男性ホルモンは女性の体内にも存在しますが、その量が異なります。テストステロンは陰毛とわき毛の成長を促します。ジヒドロテストステロンは、須毛部(ひげの部分)の毛髪の成長と頭髪の脱毛を促します。
毛髪の病気には以下のものがあります。
円形脱毛症 円形脱毛症 円形脱毛症は、皮膚の病気や全身の病気(全身性疾患)などの明らかな原因もなく、毛髪が斑状に突然抜ける病気です。 ( 毛髪の成長の概要と 脱毛[脱毛症]も参照のこと。) 円形脱毛症はよくみられます。性別や年齢を問わず起こりますが、小児や若い成人に特に多くみられます。 円形脱毛症の原因は... さらに読む を含む 脱毛 脱毛症(脱毛) 脱毛は、脱毛症とも呼ばれ、体のあらゆる部位に生じます。頭皮に起きる脱毛は禿頭(とくとう)と呼ばれます。脱毛は美容上の理由でしばしば大きな問題となりますが、全身の病気(全身性疾患)の徴候である可能性もあります。 毛髪の成長には周期があります( 毛髪の成長の概要も参照)。各周期は次の段階から構成されます。... さらに読む (脱毛症)
毛髪の病気のほとんどは、重篤ではなく生命を脅かすものでもありませんが、見た目に気になるという理由から治療を必要とすることがしばしばあります。
フケは毛髪の病気ではなく、頭皮に生じる皮膚の病気です(脂漏性皮膚炎 脂漏性皮膚炎 脂漏性皮膚炎(しろうせいひふえん)は、頭皮や顔面、髪の生え際、耳の周囲、ときにその他の部位など、皮脂腺の数が多い皮膚の部分に慢性の炎症が起き、脂ぎった黄色い鱗屑(うろこ状のくず)やフケが生じる病気です。 ( 皮膚炎の概要も参照のこと。) 脂漏性皮膚炎の原因は不明ですが、皮膚に常在している微生物であるマラセチア属の真菌の数と、それに対する人... さらに読む )。